たいていのビジネスや、そこに携わる人は、クライアントや雇い主との関係をスタートさせるのを自分で難しくしている。それは、自分のところの製品(サービス)を使って”ぼる”ために見込み客を手に入れようとしているためだ。

 もし、関係をスタートするのに邪魔なハードルを下げたり、取り除いたりできれば、もっと大勢の人があなたとビジネスを始めるはずだ。

ジェイ・エイブラハム著「ハイパワー・マーケティング」より

「最初は小さく、でも長く深く付き合えるお客様を増やしたい…」

もしあなたがそう考えているなら、”ライフタイムバリュー(LTV)”という考え方をビジネスに取り入れてみませんか?

LTV(ライフタイムヴァリュー)とは
一人の顧客が生涯にわたってあなたのビジネスにもたらす利益の総額のこと。

このLTVを意識することで、初期の売上だけに捉われず、より多くの人に気軽にサービスや商品を試してもらい、長期的な関係を築くことができるようになれます。

今回の記事では、LTVの重要性と、初期購入のハードルを下げる具体的な方法を、実際の企業の成功例を交えながら分かりやすく解説します。

「なるほど、これならうちのビジネスでも試せるかも!」と感じてもらえたら幸いです。

なぜ初期購入のハードルを下げるべきなのか?

想像してみてください。
あなたは素敵なレストランを見つけました。でも、入るには少し勇気がいる高級そうな雰囲気…。

もし、初めてのお客様限定で「ウェルカムドリンク無料!」や「お試しミニコース」があったら、気軽に足を運びやすくなりますよね?

ビジネスも同じです。
特に新しいサービスや商品は、お客様にとって未知のものです。初期購入のハードルが高いと、「ちょっと試してみようかな」という気持ちを抱く前に離れてしまう可能性があります。

しかし、初期のハードルを下げることで、より多くの潜在顧客に体験してもらう機会を増やし、その後の継続利用や高単価商品の購入につなげることができるのです。これが、LTVを高めるための重要な第一歩となります。

初期購入のハードルを下げる具体的な方法と実例

それでは、具体的にどのような方法で初期購入のハードルを下げれば良いのでしょうか? いくつかの例を見ていきましょう。

フリーミアムモデル:まずは無料で体験してもらう

「フリー(無料)」と「プレミアム(割増)」を組み合わせたビジネスモデルです。基本的なサービスや商品を無料で提供することで多くのユーザーを獲得し、より高度な機能や特別なサービスを有料で提供することで収益を上げる仕組みです。

実例:オンラインストレージ Googleドライブ

Googleドライブは基本的な機能(15GBのストレージやGoogleドキュメントなど)を無料で提供しつつ、より多くの容量や追加機能を求めるユーザーには有料プランを提供することで収益を上げる、典型的なフリーミアムモデルと言えます。無料版の使いやすさと、有料版への明確なアップグレード理由が、多くのユーザーに利用される要因となっています。

ポイント: 無料で提供する範囲を明確にし、有料プランへの移行を促すような機能設計が重要です。

低価格のお試しプラン・トライアル期間:気軽に始められる価格設定

実例:動画配信サービス(Netflix、Huluなど)

多くの動画配信サービスでは、「最初の1ヶ月無料」といったトライアル期間を設けています。これにより、ユーザーはサービス内容をじっくりと体験し、自分に合っているかどうかを判断できます。無料期間中に満足すれば、そのまま有料会員へと移行する可能性が高まります。

ポイント: トライアル期間中にサービスの魅力を最大限に伝え、継続利用への動機付けを行うことが大切です。

初回限定割引・特典:お得感で最初の購入を後押し

実例:ECサイトの初回購入割引

多くのECサイトでは、「初回購入のお客様限定で10%OFF」や「送料無料」といった特典を用意しています。これは、「せっかくなら試してみようかな」という気持ちを生み出し、最初の購入を促す効果があります。

ポイント: 割引や特典の内容を明確に伝え、購入のハードルが下がっていることを強調しましょう。

小容量・低価格の商品展開:まずは少量から試せる安心感

実例:化粧品のトライアルセット

化粧品会社では、通常サイズの製品に加えて、初回購入の方にはトライアルセットを低価格で販売することがあります。これにより、肌に合うかどうかを気軽に試せるため、初めてのお客様でも購入しやすくなります。

ポイント: トライアルセットから通常商品へのスムーズな移行を促すための工夫(例えば、サンプルクーポン同梱など)が重要です。

返金保証:購入後の不安を解消

実例:多くのオンラインサービス・商品

「もし満足いただけなければ全額返金いたします」という返金保証は、お客様にとって購入のリスクを大きく減らす効果があります。「合わなかったら返品できる」という安心感が、最初の購入を後押しします。

ポイント: 返金ポリシーを明確に伝え、お客様に安心感を与えることが重要です。ただし、悪用を防ぐための対策も検討しましょう。

LTV最大化のために重要なこと

初期購入のハードルを下げることは、LTVを高めるための第一歩に過ぎません。その後、お客様に長く愛用してもらうためには、以下の点も重要になります。

  • 質の高い商品・サービスの提供: 満足度の高い体験が継続利用の鍵です。
  • 丁寧な顧客対応: 困ったときに親身になってくれる存在は、信頼関係を築きます。
  • 継続的なコミュニケーション: 定期的な情報提供やキャンペーン告知で、お客様との関係性を維持しましょう。
  • 顧客の声の傾聴と改善: お客様のフィードバックを真摯に受け止め、サービス改善に活かしましょう。
  • アップセル・クロスセル: お客様のニーズに合わせて、より高単価な商品や関連商品を提案することで、LTV向上を図れます。

さらにLTVを高めるためには?

  1. 1回のセールスでの平均的な販売額と利益を計算する
  2. 一人のクライアントが繰り返して何回購入するのか調べて、それによる追加の利益を計算する
  3. マーケティングに費やすコストをクライアントの数で割り、一人のクライアントにかかるコストを正確に計算する
  4. 同様に、見込み客についても計算する
  5. 見込み客の中から、販売に結び付いた件数を調べる(見込み客がクライアントになる確率)
  6. 一人のクライアントが買い続ける間に稼げる利益の総額から、クライアントにする(変える)のにかかるコストを差し引いて、クライアント一人当たりの利益額を計算する

このようにして、クライアントを獲得するコストと利益が分かれば、たとえ初回購入を無料にしても、何回かの購入で利益に転じることが分かり、さらに購入のハードルをさげられるようになります。

まとめ:小さな一歩が、大きな成長につながる

初期購入のハードルを下げる戦略は、まるで庭の入り口を広くして、たくさんの人に気軽に立ち寄ってもらうようなものです。最初は小さな一歩かもしれませんが、そこで生まれた繋がりを大切に育むことで、あなたのビジネスは大きく成長していくでしょう。

今回ご紹介した実例や考え方を参考に、ぜひあなたのビジネスでもLTVを意識した戦略を取り入れてみてください。きっと、これまで以上に多くのお客様との出会いと、長期的な成長が実現できるはずです。