お客様に商品を勧めたい。会社の売上に貢献したい。そして、頑張った分は給料に反映されてほしい。

そう願うのは、ごく自然なことです。しかし、「いざお客様を目の前にすると、なぜか言葉が出ない…」「売上になかなかつながらない…」そんな悩みを抱えている営業パーソン、そして経営者の方は少なくありません。

ある経営者さんから、こんなお悩みをお聞きしました。

「営業社員に成果報酬を出しているのに、なぜか販売に結びつかないんです。どうしてなんでしょうか?」

会社への貢献が目に見える形で評価される。頑張れば頑張るほど、自分の収入がアップする。これほどモチベーションに繋がる仕組みはないはずです。なのに、なぜ成果が出ないのか?

その答えは、意外なほどシンプルでした。

「営業社員がお客様に話を切り出せていないから」

この「話を切り出せない」という問題は、実は特定の会社だけの話ではありません。多くの営業現場で、水面下で起きている共通の課題なのです。

では、一体なぜ、お客様に話を切り出すことができないのでしょうか?そして、どうすればその壁を乗り越え、売上アップに繋げることができるのでしょうか?

この記事では、多くの経営者と接してきた当社の視点から、その具体的な解決策を解説します。

営業トークが切り出せない、その本当の原因とは?

「話を切り出さなければ何も始まらない」「売上が上がれば、自分の給料もアップする」頭ではそう理解しているのに、なぜお客様に商品を勧められないのでしょうか?

その最も大きな原因は、私たちの心の中に潜んでいます。

あなたも、こんな風に考えたことはありませんか?

  • この商品のことをお客様に伝えたら、自分はどう思われるだろうか?
  • こんなことを伝えたら、嫌われてしまうんじゃないだろうか? それは嫌だな・・・
  • だったら、これからもいい関係でいたいし、話すのはやめておこうかな・・・。

そう、私たちは無意識のうちに、「お客様に嫌われたくない」「良い人だと思われたい」という強い気持ちを抱いています。これが、営業トークを阻む最大の要因、通称「メンタルブロック」と呼ばれるものです。

心に鍵をかける「メンタルブロック」の正体

ハートにカギをかける

人は誰しも、「集団の中に属していたい」「みんなとうまくやっていきたい」という本能的な欲求を持っています。自分から嫌われたいと思う人はいませんよね。

この本能的な欲求が強く働くことで、お客様に商品を勧めることに対して、心理的なブレーキがかかってしまいます。

「もし営業トークで煙たがられたら、お客様との良い関係が壊れてしまうかもしれない…」

たった少しの給料アップのために、わざわざお客様に嫌われるリスクを負いたくない。そう考えてしまうと、どうしても営業トークを切り出すことができなくなってしまうのです。

この「メンタルブロック」は、決して「やる気がない」とか「会社に貢献したくない」という問題ではありません。人間の本質的な欲求に基づいているからこそ、一度かかってしまうと、なかなか外すことが難しいのです。

メンタルブロックを外すための第一歩

では、このやっかいなメンタルブロックをどうすれば外すことができるのでしょうか?

その鍵は、「自分がどう思われるか」ではなく、「相手がその結果どうなるのか?」という、「相手の立場・状況・変化」に目を向けることです。

例えば、こう考えてみてください。

  • もし今、このことを伝えなかったら、この人は後々こんなことで悩むんじゃないだろうか?
  • 今、話さないと、この人は間違った選択をしてしまうんじゃないだろうか?

「お客様のために」という強い思いを持って伝える練習を重ねることで、少しずつメンタルブロックは解除されていきます。

もちろん、すぐにできるようになるわけではありません。おすすめする商品・サービスの特徴や、お客様が得られるメリット、利用しないことで生じるデメリットなどを多角的にリサーチし、お客様のことを心から思って伝える練習が必要です。

この練習を積み重ねることで、お客様への営業トークに対する『心構え』ができてきます。

成果を出すために必要な『あと2つ』の要素

しかし、心構えができたからと言って、すぐに営業トークができるようになり、成果に結びつく訳ではありません。

例えば、
「お伝えして、いろいろ質問されたらどうしよう・・・」
「伝えたいけど、どういう風に伝えればいいんだろう?」

といった不安もあります。

そこで必要になるのが、「スキル」と「ツール」という2つの要素です。先ほどの「メンタル(心構え)」と、これからお伝えする「スキル」と「ツール」が揃って初めて、営業トークで成果を出すための強固な土台が完成します。

スキル:何を、どう伝えるか?の「技術」

「スキル」とは、具体的に何をすればいいのか、どのようにすればいいのか、といった「技術」の部分です。

  • その商品の特徴や価格について、お客様に分かりやすく説明できるだけの理解があるか?
  • どのような流れで、お客様に商品を説明するか?実際に説明した経験はあるか?
  • どうすればお客様が「欲しい!」と思うようなトークができるか?

これらの「技術」が磨かれていなければ、せっかくメンタルブロックが外れても、お客様にうまく伝えることができません。

ツール:実行をサポートする「道具と環境」

「ツール」とは、営業トークを実行するために必要な「道具」や「環境」を指します。

  • 商品のパンフレットや資料はあるか?
  • ウェブサイトやホームページで商品詳細を見せるなら、パソコンやタブレットは準備できているか?
  • 何を、どのように、どの順番で伝えれば良いかを示す「トークスクリプト」は用意されているか?

どんなにやる気に満ち溢れていても、お客様の目の前で説明する資料がなかったり、商品知識がなかったりすれば、せっかくの気持ちも揺らいでしまいます。

営業トーク成功への3つの鍵:マインド・スキル・ツール

①マインド
②スキル
③ツール
この3つが揃って初めて、あなたは自信を持ってお客様に話を切り出し、成果に結びつけるスタートラインに立つことができるのです。

まとめ:練習すれば、誰でも営業トークは上達する!

冒頭の経営者さんの話に戻りますが、どんなに頭では「やらなきゃいけない」「やれば報酬がもらえる」と思っていても、この「マインド」「スキル」「ツール」の3つの要素が不足していれば、営業トークで成果を出すことは非常に難しいでしょう。

逆に言えば、この3つが揃えば、どんな人でもお客様に喜ばれながら、成果を出す営業パーソンになれるのです。

もし、お客様に自社の商品・サービスを勧めることに抵抗がある、あるいはなかなか成果が出なくて悩んでいるのなら、ぜひこの3つのポイントを確認してみてください。

  • あなたの「メンタルブロック」は外れているか?
  • 必要な「スキル」は身についているか?
  • 適切な「ツール」は揃っているか?

そして、もし不足している部分に気づいたら、一つずつ補っていく努力を始めてみましょう。

誰でも最初から、お客様に響く完璧な営業トークができるわけではありません。先輩の営業に同行したり、商品知識を徹底的に蓄えたり、お客様のことを思って提案内容を考えたりする日々の練習の中で、スキルもツールも磨かれていきます。

つまり、練習すれば、誰でもお客様に喜ばれる営業トークができるようになる、ということです。

あなたの営業活動が、お客様にとってもあなたにとっても、より良い未来を創造する一歩となることを心から願っています。