7月のある日の午後。

家でゆったり過ごしていると、「050」から始まる見知らぬ番号から携帯に着信がありました。

こういう場合、私はほとんど売り込み電話だと思っています。

例えば
「貴社のホームページを見せていただいていたんですが、検索キーワードでSEO対策すれば、毎月注文がはいるようになりますよ!本当は月5万円なんですけど今だけ3万円で・・・」
とかなんとか。

そんな電話が多いので普段なら出ることも無いのですが、その時はちょっと話でも聞いてみるかとたまたま電話に出てみました。

ただ、長々と話を伸ばされるのは嫌なので、開口一番「藤井です。どちらさまですか?ご用件は?」と伺うことにしています。

すると
「株式会社○○の△△と申します。今回、お仕事をお願いしたいと思い、連絡させていただいたんですが・・・」

おっと、、これは大変失礼しました。直接電話でお仕事の依頼でした。

とは言え、相手がどんな会社でどんな要件なのかを理解するには電話だけでは詳しく分かりません。そこで「会社情報やお仕事の内容など当社のメール宛てに送ってください」と伝えました。

通常の売り込みの場合、こちらが電話を切ろうとすると話を引き延ばそうとしてくるのですが、それも無く、すんなりと通話は終わりました。

◆  ◆  ◆

翌日メールが届き、更に仕事の詳しい話をするためZoomで30分ほどミーティング。

仕事の依頼内容は、ある商品を宣伝広告して売って欲しいという話で、1つ売れれば〇〇円の報酬を払うというアフィリエイト(成功報酬型広告)のお願いでした。

アフィリエイトの仕組み

この会社さんは、「商品を売って欲しい広告主」と「商品を広告してくれるアフィリエイター」を繋ぐASP(アフィリエイト仲介事業者)で、事前にメールで送られてきた会社のHPを見る限りでは規模も大きく、また、一番最初に私が電話で話した方が担当者らしく、対応も誠実で案件としては信頼できる内容だと判断しました。

この案件でのポイントは「いかにサイト訪問者に商品を魅力的に伝えるか?」「買う気にさせるか?」という部分であり、その点はセールスライターとしてお役に立てるかなと感じました。そして話は進み、「それでは販売していただきたい商材の広告データなどを送らせていただきますね」となりました。

どんな商品なんだろうと、ちょっとドキドキしながら待ちました。

◆  ◆  ◆

そうこうしていると、販売して欲しいという数種類の商品データ、利用者を購入に導くランディングページ、広告に使えるバナー画像などが送られてきました。

ランディングページもかなり作りこまれており、そのページに誘導できれば、そこそこの確率でコンバージョン(申し込み・購入)が取れるだろうと感じられました。

また「1つ販売できたら○○円」という部分の報酬額も高く、魅力的な条件です。

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ASPから送付されてきた商品情報を元に文章を作成する段階になりました。

先方から送られてきた資料やランディングページに書かれている内容をまとめていけば、いいものができるだろうなとは思いました。

しかしふと、
「これらの商品を実際に購入して使った人たちの感想はどうなんだろう?」
という思いが湧いてきて、ネットで検索してみました。

すると出てきた情報の評判があまりよくありません。

自分が使ったわけでもないし、全ての利用者がネット上に口コミを書くわけではないので情報を鵜呑みにするわけではありませんが、
「初回購入の安さに惹かれて購入してみたものの、効果は感じられなかった」
「定期購読の仕組みが分かりにくい」
「返金の対応がスムーズにできなくて困った」

といった投稿が目につきます。

なるほど・・・。
送付されてきたランディングページや資料は「いかに利用者を惹き込むか」という点に焦点をあてているためデメリット的なことは教えてもらえません。ですが、利用者の声には素直な感想が書いてあるのです。

「当社がその商品を宣伝広告し、その結果、嫌な思いをする購入者を増やすことにつながってしまう可能性がある」と感じました。

そしてこのまま対応を続けられないと判断し、以下の文章を担当者に送りました。

ご依頼のお断り文章

このメール送付後に担当者様から連絡があり、そういうことならと状況を理解いただき、今回のご依頼の件は白紙とさせていただくことになりました。

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当社では基本的にお客様のご依頼を断ることはしていないのですが、どんなに利益が取れそうな案件でも「購入者に嫌な思いをさせてまで購入してもらうようなことはしたくない」というポリシーだけは曲げることはできません。

今回の件は、企業としての「あり方」を改めて見つめ直すよい機会になりました。